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​『セカイの片隅で』

 物語は如何でしたか? 面白かった? つまらなかった? いずれにせよ、貴方に彼らの生きた証が伝わったのならば幸いです。

 いつかは忘れ去られてしまうのなら、また思い出してもらえれば良い。こうして文字にしておけば、いつでも戻ってこられるでしょう?

 ……わたくしが彼らにしてあげられることは、これくらいしか無いですから。

 と、お話が長くなってしまいましたね。ちょうど雨も止みましたし、町への近道をお教えしますからこちらについていらっしゃいな。
 その本は、どうぞ貰ってやってください。煮るなり焼くなり読み返すなり、貴方の自由です。

 

 


 え? わたくしの名前ですか?
わたくしは……いえ、私の名前は、ヴィクトリア。貴方が今お手持ちの本は、さしずめ『ヴィクトリアの手記』と言った所でしょうかね。

 ほら、町はすぐそこですよ。
 気をつけて行ってらっしゃい。
 貴方の未来へ。

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