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『命を削り闘志を燃やせ』 monologue1770

『嗚呼、いいねぇ、お前の目、お前の耳。とても精巧にできているね。やっぱり、人間はいいねぇ。

……ぜーんぶぜんぶ、欲しくなっちゃうねぇ』

 

 

捻れ歪んだ世界の中、黒い体に人間の『口』だけを貼り付けた【略奪者】の声がはっきりと聞こえた。

 

耳障りな笑い声ばかりが頭に鳴り響く。

オレの肩を何度も揺さぶり、泣き叫びながら何かを訴えようとしている彼の言葉など、全てかき消されこの耳に届くはずもなく。

涙でぼやけた視界から、彼の姿は遠ざかるばかり。

 

 

嗚呼、憎い、憎らしい……!!!

渡してなるものか。オレの生きた証を、絶対に渡してなるものか。

こんな奴等に奪われるくらいなら……

 

 

【声の能力】─『運命』

 

 

声によって発動した運命の炎は、オレ自身の目と耳を焼き付くし、そして──

 

「うっ……あああああぁぁぁっ……!」

 

 

一切の光を通さなくなった。

 

 

 

『嗚呼、勿体ない、勿体ない。ワタシに取られたくないから、自分で焼いた、自分で機能不全にしたねぇ。…………でも、ワタシは諦めないからねぇ。あと一対、今度はお前の左目と左耳を奪いに行くからねぇ』

 

 

 

『必ず、行くからねぇ』

 

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個人番号:1770

時雨 命(しぐれ みこと) 13歳

 

施設育ちの少年。鋭い観察眼と、寝ていても少しの物音で気配を察知する聴力を備えていたが、半年前の【略奪者】との戦いにおいて右目と右耳を奪われそうになった際、略奪を阻止しようと自身の手によって顔の半分を焼却した。その時の傷の後遺症で右目と右耳の視力・聴力を失っている。

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