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『孤独な魔王は夜に謳う』 monologue1797

俺様は孤高の魔王だ。

今は人間の体に身を潜めてはいるが、いつか、岩山の頂上に聳え立つ我が城へと戻っていくのが運命。

そう決まっている。偉大なる魔王様だ。

 

 

『どうしてなの? 統也はどうして、お兄ちゃんたちのように普通にしていられないの?』

 

『こんな力など、気味が悪いだけで何の役にもたちやしないじゃないか。お前は、夜月家の恥だ』

 

 

だから、時折思い出すこれは、俺様の『宿主』の記憶であって、俺様自身の記憶ではない。俺様は、このようなろくでもない人間を親と慕った過去など無いのだ。

 

──そうだよな?

 

【声の能力】─『魔王』

 

 

お父さん、お父さん、魔王がいるよ

落ち着くんだ坊や

枯葉が風で揺れているだけだよ

 

 

そうだ、所詮はこれもただのまやかしだ。

忘れてしまえ。全部溶かしてしまえよ。

 

夜月統也だった頃の記憶など、全て、捨ててしまえよ。

 

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個人番号:1797

夜月 統也(やづき とうや) 12歳

 

名家の夜月家に三男として生まれる。何不自由なく幸せな暮らしを送る筈であったが、幼少期から奇行が目立ち、更には【声の能力】を所持していた事から、両親には腫れ物のように扱われていた。他の兄弟と同等に扱って貰えなかった劣等感から、自身の中に『魔王』としての人格を生み出した。

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